産業廃棄物収集運搬業には許可が必要!取得方法は?
私たちが日々使うものは農場や屠畜場(とちくじょう)や工場などで生産されていますが、産業によって出るごみの一部は産業廃棄物に指定され、一般的な廃棄物よりも厳しい条件で処理されています。
大量に産業廃棄物が出ることや、ものによっては周囲に様々な影響を与えるため、収集運搬などにも許可や資格が必要となります。
国連サミットで採択されたSDGsでは廃棄物による環境などへの問題を改善するため、目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットとして、12.5 「廃棄物の発生防止、削減、リサイクルおよび再利用(リユース)により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」というものが掲げられています。
その目標達成に向けて、日本でも様々な取り組みが行われています。
廃棄物処理法が定める産業廃棄物とは
廃棄物の処理は、法令で定める厳しい規定に基づいて行われます。
その法令とは1970年に制定された廃棄物処理法であり、廃棄物の排出抑制や適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分などの処理により、生活環境を保全することを目的としています。
この法令では廃棄物は汚物または不要物であり、固形状または液状のものとされています。
これは廃棄物全体の規定であって、一般廃棄物と産業廃棄物の2種類に分けられます。
なぜ2種類に分けられるかというと、それぞれ処理責任や処理方法、処理を行う業者などが異なるためです。
廃棄物は適切に保管、収集運搬、処理が行わなければ、私たちの生活を含む環境に多大な影響を与えるため、厳しい規定が設けられています。
廃棄物処理法が厳しい規定で制定されているのは、その背景に理由があります。
廃棄物処理法が制定された1970年は高度経済成長期であり、様々なものが生み出されました。
一方で多くの廃棄物も排出されることとなり、公衆衛生だけでなく公害も発生するなど大きな問題となりました。
それを受け、政府は公衆衛生の向上や公害問題対策、生活環境の改善などを目指し、厳しい規定を設け、法整備を行っています。
ただ時代が変われば排出される廃棄物にも変化が見られ、社会や経済も変わっていくため、今に至るまで何度も改正が行われています。
産業廃棄物の分類
産業廃棄物とひとまとめにされていますが、さらに産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の2種類に分類することができます。
そもそも産業廃棄物とは「事業活動に伴って発生した廃棄物のうち、法令で定められた20種類」と規定されています。
注意点としては、事業活動で排出されたものがすべて産業廃棄物になるわけではなく、品目によっては業種が限定されるものがあります。
あらゆる事業活動に伴うもの | 排出する業種などが限定されるもの |
---|---|
燃え殻 汚泥 廃油 廃酸 廃アルカリ 廃プラスチック類 ゴムくず 金属くず ガラス、コンクリート、陶磁器くず 鋼さい がれき類 ばいじん |
紙くず 木くず 繊維くず 動物系固形不要物 動植物性残渣(※2) 動物のふん尿 動物の死体 |
※2 動植物性残渣(どうしょくぶつせいざんさ):動物性や植物性の固形状の不要物(動物、魚の皮・肉・骨、卵から、貝がら、肉・乳類の加工不良品等)
上記がその品目になります。「あらゆる事業活動に伴うもの」ついては業種関係なく、事業活動で排出されたものはほとんどが産業廃棄物になりますが、「排出する業種などが限定されるもの」においての7種類は業種によっては排出されても事業系一般廃棄物として処理されます。
残り1品目については産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないものになります。
これに対して特別管理産業廃棄物は「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」であり、通常の廃棄物よりも厳しい規制を設けています。(特別産業廃棄物のうち特定有害産業廃棄物としても分類されているものもあります)
産業廃棄物を収集運搬するための許可と申請
産業廃棄物は廃棄物処理法に基づいて保管、収集運搬、処理が適切に行わなければなりません。
またその処理責任は産業廃棄物の排出事業者が担うことになります。そのため基本的には事業者が法令に定められた処理施設を確保し、保管から収集運搬、処理までを自己の責任で適正に行う義務を負います。
ただし、すべての事業者が処理までを行えるわけではないため、産業廃棄物処理業者に委託することで、適正な処理を行うことができます。
その場合も委託基準に従って事業者が選ばなければならず、責任は委託した事業者も負うことになります。
産業廃棄物処理業者は収集運搬業と処理業に分けられます。今回は収集運搬業についてですが、どちらも都道府県の許可と監督の下、保管基準や収集運搬基準、処理基準に基づいて行われます。
基準と取得方法
産業廃棄物の収集運搬には基準が設けられています。その基準を満たせなければ、収集運搬業の許可は得られません。
その基準が「施設に係る基準」及び「申請者の能力に係る基準」です。この2つを満たすことが必要となりますが、大きく分けると6つの基準が存在します。
まず産業廃棄物が飛散や流出の防止、収集運搬時の悪臭や騒音、振動によって生活環境の保全上支障が生じないようにすることが規定されています。
それに加えて、産業廃棄物を運搬する車両には両側面に表示を行う必要があります。
排出事業者自らが運搬する場合には、産業廃棄物を収集運搬している旨と排出事業者名が必要になりますが、産業廃棄物袖手運搬業者の場合は、産業廃棄物を収集運搬している旨、運搬業者名にプラスして許可番号の表記も必要になります。
これらを見やすく鮮明な文字で表示することが義務付けられており、収集運搬車内には産業廃棄物管理票(マニフェスト)と産業廃棄物処理許可証の写しを常時携帯しなければいけません。
さらに収集運搬に伴って産業廃棄物の積替えと保管を行う場合は、次の基準が設けられています。
- あらかじめ、積替え後の運搬先が定められていること
- 搬入された産業廃棄物が、適切に保管できる量を超えないこと
- 搬入された産業廃棄物の性状に変化が生じないうちに搬出すること
- 保管量が1日当たりの平均排出量の7日分を超えないこと。
- 掲示板に、保管上限の数量を表示すること
これらに加えて、産業廃棄物保管基準に従った上で、積替えの保管を行うことができます。
保管場所に関しては届出・許可が必要であり、収集運搬業者であれば積替保管を含む収集運搬の許可を取らなければいけません。
石綿(アスベスト)含有産業廃棄物と水銀使用製品産業廃棄物は、収集運搬するにあたり、破砕することがないような方法をとり、他の産業廃棄物と区分することも求められます。
また、積替保管を行う場合も、他のものと混合しないように仕切りを設けるなどの必要な措置をとらなければいけないこと、掲示板にこれらの廃棄物が含まれていることを明示する必要があります。
これらを満たした上で、一般財団法人主催の講習会課程を受講し、修了証を受領すれば、都道府県によって許可を受けることができます。
ただし、欠格要件が1つでも該当すれば、講習会自体を受講できず、事業許可を受けることはできません。
欠格要件
- 成年被後見人、被保佐人、破産者
- 禁錮以上の刑に処せられてから5年を経過しない者
- 廃棄物処理法等の環境関連法、刑法などの法律違反によって罰金以上の刑に処せられてから5年を経過しない者
- 廃棄物処理業、浄化槽清掃業の許可を取り消された者で取消しの日から5年を経過しない者(廃業した場合も同じ)
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員などがその事業活動を支配する者
申請窓口
産業廃棄物収集運搬業の許可申請・届出は、都道府県知事または政令で定める市の許可が必要です。
また事業の全部あるいは一部を廃止した場合や、住所、氏名または名称、法人の役員、事業のように供する施設など、一定の事項に変更があった場合は、改めて届出をする必要があります。
都道府県の管轄により厳格に管理されているため、許可や手続きも厳しいものとなっています。
また申請・届出窓口は少々複雑になっています。
廃止または変更の届出は10日以内に行う必要があり、法人で登記事項証明の添付を必要とする場合は30日以内となりますので、どちらも注意してください。
事前に最寄の自治体の廃棄物担当課などに問い合わせを行うようにしましょう。
申請料金
申請・届出には手数料が発生します。これは新規だけでなく、更新や変更でも必要となりますので、申請前にこちらも確認しておきましょう。
種類 | 新規 | 更新 | 変更 |
---|---|---|---|
産業廃棄物収集運搬業 | 81,000円 | 73,000円 | 71,000円 |
特別管理産業廃棄物収集運搬業 | 81,000円 | 74,000円 | 72,000円 |
この手数料は都道府県や市町村で一律となっていますので、どこで申請しても同じになります。ただし廃止・変更届に関しては、手数料はかかりません。
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